2011年 06月 09日
書を読んで羊を失う
鶴ヶ谷真一『書を読んで羊を失う』(白水社)を読んだ。「読書亡羊」という四字熟語があるということを知らなかった。なかなかいい言葉である。もしいま小学五年生くらいで冬休みならば、私はまちがいなくこの四字熟語を書き初め大会の言葉に選ぶだろう。そういえば、息子は五年生だったはずなので、十二月になったら交渉してみよう。嫌だといわれたら、クリスマスプレゼントを増量してやってもいい。

中村蘭林という江戸の漢学者の随筆集『学山録』にある言葉。
 「人生の楽は、戸を閉じて書を読むに過ぐるは莫し。一僻書を得、一奇字を識り、一異事に遇ひ、一佳句を見れば、覚えず踴躍す。絲竹[管弦]前に満ち、綺羅目に満つと雖も、其の快喩ふるに足らざる也」(140頁)

最後に収められている「丘のうえの洋館-寺田寅彦」の導入部はことさらにすばらしい。以下、そこに引用されている寺田寅彦の日記の言葉。
 学校をやめれば生活は苦しくなる、しかし何時迄も重箱の中に押し詰められて楊枝でつゝかれるやうな生活をするのもつくづく厭になつてしまつた、貧乏してもいゝから自由なからだになりたい、やめてどうするといふあてはない、子供は何も知らずに愉快に歌つたりカルタを取つたりして居る、聞いて居ると何だか名状の出來ぬ心持になつて来る、(168頁)
寺田寅彦、このとき四十二歳。
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by anglophile | 2011-06-09 06:57 | 読書 | Comments(0)


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