2011年 05月 13日
Never Let Me Go
過去2回の挑戦では数ページで挫折し、積ん読状態だったものの、先日NHKで放送された特集番組の影響もあってか、再度きっかけを得て、今さらではあるが、カズオ・イシグロの Never Let Me Go を読み終わった。
ハヤカワepi文庫の邦訳版に付された解説では柴田元幸さんが「個人的には、現時点でのイシグロの最高傑作だ」と形容し、ここ日本でも大変評判になっている作品だが、個人的には、やや物足りなかった。正直なところ、★5つ中2~3つといったところか。好みの問題なのだろうが、The Remains of the Day (『日の名残り』)の重厚な文体や The Unconsoled (『充たされざる者』)の徹底した不条理がもたらしてくれる高揚感には及ばないと感じた。
一番困難だったのは、中心テーマとなっている「クローン」や「臓器移植」に関する部分に深みが足りないために、どこまで読み進んでもこの小説のそもそもの設定に対する疑問の靄が晴れなかったことだ。まったり進む前半は我慢の読書、かろうじて主人公 Kathy ら5人が Norfolk に向かう15章あたりから視界がよろしくなり、なんとか最後まで読むことができたという感じ。前半を読んでいるあいだは、何度か妻に「どこらへんからおもしろくなるの?」と訊く始末。ちなみに、うちの妻はずっとまえに単行本で読んでおり、「読み終わってからふるえたわ」と言っていた。
とはいえ、全然おもしろくなかったかというと、そうでもなく、最後の2ページなどはなかなかすばらしいとはおもう。ちょっとしたオチになっているのだが、その描写は、例えば The Great Gatsby のラストに匹敵するくらいの奥行きがあるのではないか。ここだけはまた読み返したいとおもった。
個人的には、「現時点でのイシグロの最高傑作」は、The Unconsoled だとおもっている。あのヘンな世界観のほうが私には合っているのかもしれない。
えー、ちなみに、一番近作の短篇集 Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfall は積ん読につき未読である。