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古本万歩計 Of what is lost, all I wish to recover is the daily availability of my writing, lines capable of grasping me by the hair and lifting me up when I'm at the end of my strength. - Roberto Bolano

ダン・フォーゲルバーグ 「バンド・リーダーの贈りもの」

数日前のブックオフで、ダン・フォーゲルバーグ(Dan Fogelberg)のベスト盤CDを買うことができた。この人のベスト盤はたくさん出ていて、今回買ったのは九〇年代初めに出たCDだから、音質はあまり期待できないのだが、それでもずっと中古で買いたいと思っていたから、見つけたときはうれしかった。

この人のことをたまたま知ったのは二年前だった。すでにその前年の二〇〇七年に惜しまれて他界している。いろいろ聞くうちに、「ロンガー(Longer)」というラブソングはたしか昔CMで使われていたはずだということにも気づいた。でも、日本では一般的には知られていないと思う。

なかでも私が一番深く感動したのは、「バンド・リーダーの贈りもの(Leader of the Band)」という曲の歌詞である。これは老いた自分の父親に対する敬慕を歌った曲である。以下、その歌詞と対訳を。

An only child alone and wild
A cabinet maker's son
His hands were meant for different work
And his heart was known to none
He left his home
And went his lone and solitary way
And he gave to me a gift I know
I never can repay

A quiet man of music
Denied a simpler fate
He tried to be a soldier once
But his music wouldn't wait
He earned his love through discipline
A thundering velvet hand
His gentle means of sculpting souls
Took me years to understand

★The leader of the band is tired
 And his eyes are growing old
 But his blood runs through my instrument
 And his song is in my soul
 My life has been a poor attempt
 To imitate the man
 I'm just a living legacy
 To the leader of the band

My brother's lives were different
For they heard another call
One went to Chicago
And the other to St Paul
And I'm in Colorado
When I'm not in some hotel
Living out this life I've chose
And come to know so well

I thank you for the music
And your stories of the road
I thank you for the freedom
When it came my time to go
I thank you for the kindness
And the times when you got tough
And Papa I don't think I said
"I love you" near enough

★repeat
I am the living legacy
To the leader of the band

家具職人の息子は
一人っ子でやんちゃだった
でも、父の手は別の仕事に向いていた
そんな思いは誰にも知られることがなかった
父は家を飛び出し
自分の道を独りで歩き始めた
そして、返すことなんてできないくらいの
才能を僕にくれた

物静かだったが音楽をこよなく愛した父は
単純な運命に従うことを拒んだ
一度は兵士になろうとしたが
音楽が待ってくれなかった
父は規律の中から愛を得た
稲妻のようでベルベットのような手
魂を彫る優しい方法を
理解するのに何年もかかった

バンドリーダーは疲れ
目は衰えてきた
だけど彼の血は僕の楽器に流れ
歌は僕の魂にある
今までその人生を真似ようとしてきたが
決して真似のできるようなものではなかった
僕はバンドリーダーの
生ける遺産にすぎない

2人の兄は違った道に進んだ
なぜなら彼らには別のお告げがあったから
上の兄はシカゴにいるし
下の兄はセント・ポールにいる
そして僕は旅でホテルに泊まっていないときは
ふだんコロラドにいる
自分が選んだ人生を一生懸命生きているし
ようやくその人生も楽しくなってきた

僕はあなたに感謝します
あなたの音楽と旅の思い出に
あなたに感謝します
僕がひとり立ちするときに好きにさせてくれて
僕はあなたの優しさに感謝します
厳しく叱ってくれたことにも感謝します
お父さん、あなたを愛していることを
まだ充分に伝えられていない気がします

僕はバンドリーダーの
生ける遺産にすぎない

自分の父親も還暦を迎え、たまに会うと「年をとったなあ」という印象を持つ。この歌詞はここ数年の私の気持を代弁してくれているようで、何度聞いても感傷的になる。


by anglophile | 2010-02-14 15:16 | 音楽 | Comments(0)