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古本万歩計 Of what is lost, all I wish to recover is the daily availability of my writing, lines capable of grasping me by the hair and lifting me up when I'm at the end of my strength. - Roberto Bolano

三文豪と自転車とスタンプラリー

今日は申し分のない秋晴れのもと、午後から『秋は金沢三文豪スタンプラリー』を敢行がてら、金沢市中心部を自転車で散策してきた。スタンプラリー達成者がもらえる「オリジナル文庫本」がお目当てだった。対象となるチェックポイントは以下の5箇所である。

・泉鏡花記念館
・徳田秋聲記念館
・室生犀星記念館
・金沢文芸館
・石川近代文学館

このうち、泉鏡花記念館が今日まで休館日なのだが、5つのうち4箇所をまわればよいので問題なし。まずは室生犀星記念館を訪れた。ここでは、現在、犀星生誕120周年記念の企画として「装幀の美 恩地孝四郎と犀星の饗宴」(11月15日迄)が開かれている。これが良かった。私は恩地孝四郎については多くを知らないが、それでもあの装飾的な文字は一度見たら忘れられない。勉強のために瀟洒な図録を購入する。
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続いて向かったのが、石川近代文学館。ここには金沢三文豪だけでなく、石川県に縁のある作家たちの資料が数多く展示されている。ちなみに、朔太郎の『月に吠える』が展示されていたのには驚いた。あれは大正6年の感情詩社版だったろうか。本の状態があまりいいものではなかったから、復刻版ではなかったはず。(復刻版はよくヤフオクで見かける)恩地孝四郎による装幀のカバーもちゃんと付いていた。「本物」を目にすることができて興奮してしまった。

赤レンガの建物を後にして、次は金沢文芸館へ。ここは以前銀行だった建物をそのまま文芸館にしたということだった。建物自体は昭和4年に建てられたもので、昭和初期の雰囲気が残っているように感じる。3階建てで、1階は交流サロン、2階は「五木寛之文庫」、3階は文芸フロアになっている。金沢にある書店に行くと、よく五木寛之コーナーがあったりするほど、この作家は石川県と深い縁がある。自筆原稿も展示されていたが、私は五木寛之の書く文字も好きである。3階には泉鏡花文学賞の歴代受賞作が展示されていた。係員の女性の方が丁寧に説明してくださった。

さあ、残すはあと1つ。午後5時には閉館するので先を急ぐ。徳田秋聲記念館は浅野川沿いにある。正直、徳田秋聲についてはほとんど知らないのが情けないかぎりである。館内1階の奥に、「秋聲作品への賛辞」ということで、夏目漱石、正宗白鳥、室生犀星、廣津和郎、川端康成、古井由吉、中上健次らの言葉が書かれたパネルが設置されていた。中でも、古井由吉の「とにかく男女の日常の苦と、とりわけその取りとめのなさを描いては右に出る者もいないのではないか」という言葉が印象に残っている。ちなみに、古井はむかし金沢大学の独文科で教えていたことがあった。

さて、めでたくスタンプラリー達成ということで、秋聲記念館で「オリジナル文庫」を頂いた。題して、「金沢三文豪掌文庫」。全76頁のかわいらしい文庫である。
三文豪と自転車とスタンプラリー_c0213681_23432695.jpg
収録作品は、以下の如し。

・泉鏡花 「絵本の春」
・徳田秋聲 「少年の哀み」
・室生犀星 「旅にて」
・三文豪俳句抄

犀星の「旅にて」は、犀星の郷里金沢での庭づくりの話が出てくる随筆である。そういえば、今話題のウェッジ文庫からしばらく前に『庭をつくる人』というのが出ていた。明日にでもさっそく買いに行かねばなるまい。

久しぶりの自転車による遠出で良い運動になった。実は、今日訪れた4つの文学館は今まで一度も行ったことがなかったのだ。地元にこんなに素晴らしい場所があったことにうれしくなった一日であった。お腹がいっぱいになりました。

◆『2666』読破メーター:386頁
by anglophile | 2009-11-01 00:00 | その他 | Comments(0)