<   2013年 06月 ( 4 )   > この月の画像一覧

2013年 06月 24日
BOOK DAY とやま
幸い、朝方に中継されるコンフェデレーション・カップのメキシコ戦を見ようなどという気も起こらず、十分に睡眠時間を取って、体調は万全、遅刻の心配もなし。ということで、昨日は富山で初開催された一箱古本市に参加してきた。暑い日ではあったが、文句を言ってはいけませんね、最高の一日となりました。オヨヨさん、上関さん、そして初めてお会いしたブックスシマさんはじめ、スタッフの方々にも大変お世話になりました。コインパーキングを案内してもらったり、本のかたまりを運搬してもらったりと本当にありがとうございました。

会場は、総曲輪通りの西端を抜けたところに位置する富山市民プラザというところ。富山駅にもまあまあ近い。プラザ前にこじんまりとした広場があって、そこにテントをたてて2店舗が共同で出店するという形。出店数は40を超えていたようなので、けっこうぎゅうぎゅうづめだったが、そのぶん熱気が感じられてよかったと思う。到着後、上関さんに受付をしてもらい、京都からいらっしゃったダンデライオンの中村さんに紹介していただく。2年前に訪れた名古屋の一箱古本市に中村さんが出店されていて、そのときにちょっとだけ話をさせていただいたのだった。あのときの一箱の中身の濃さには驚嘆したものだった。今回はけっこう話をさせていただき、いろいろ勉強になりました。「本好き」を極めていらっしゃる方はすごいですね。いずれ京都のお店を訪れたいと思いました。
c0213681_2352586.jpg

市民プラザは大通りに面していて、月に一度こういう催し物が開かれているそうで、そのため食べ物の屋台テントも出ていて、昼食に困らないのはありがたい。おろおろしながら準備を済まして、開始時間までのあいだ、皆さんの準備の様子を見に行く。金沢からはあうん堂さんやNYANCAFEさんご夫妻、源法院のメンバーの方々がたくさんいらっしゃていて、皆さんにご挨拶申し上げる。出店用の箱も貸していただきありがとうございました。地元の古本よあけさんもいらっしゃっていて、お目当ての「古本よあけ通信 vol.18」をさっそくいただいた。私もこういうフリーペーパーみたいなの作ってみたいけど、続けられそうにないのでなかなか作るまでにはいたらない。
c0213681_23582746.jpg

出店者はくじを引いて店舗場所を決める。私は奥の方のテントになった。同じテントには金沢の一箱にも出店されているADLIFTさんがいらっしゃり、今回は屋号を「かえる書林」に変えて出店されていた。建築関係の本とシブいCDを出品されていた模様。私の方はといえば、いつも通り文学中心。半年ぐらいのあいだにたまった本を出品した。
c0213681_011142.jpg

始まってほどなくして、龜鳴屋さんと中日新聞のMさんがいらっしゃったのでびっくり。何でも龜鳴屋さん関係の重要な取材があるということで足を運ばれたようだった。Mさんとは3月の山本善行さんのトークイベントのときにお会いしたが、龜鳴屋さんとは2年ぶりくらいだったので、またお目にかかれてほんとによかった。新しい本を見せてもらいに、近々またお邪魔させていただきます!

新しい試みとして「3冊500円コーナー」を設置してみることにした。前日、部屋をガサコソしていたら、モンティ・パイソンの下敷きが出てきたので、身長196cmのジョン・クリーズに「3冊500円」と言わせてみたが、反応があんまりなかったのでちょっと残念。この下敷きは非売品だが、もし売って下さいというお客さんがいたらどうしよう、などという心配は無用であった。
c0213681_010474.jpg

反応がなかったモンティ・パイソンに比べ、今回一番ウケがよかったのはこちらのCDだった。ちょっとアクセントになればと思い、持っていったのだが、かなりのお客さんが反応してくれてうれしかった。手に取られるお客さんの反応をいちいち伺うのがおもしろかった。売れなくても別にいいのだけどと思っていた後半、年配の男性の方が買っていかれた。
c0213681_02399.jpg

いや、でも本の方も本当にたくさん買っていただきました。とにかくお客さんが多くて多くて。流れが途切れた合間を利用して、数分間だけ他のお店を見に行くのが精一杯。ヒマだったらこっそり抜け出してブックエンドに行ってみようなどと作戦を立てていたのだけれど、ぜんぜんそんなふうにはならなかった。わずかな時間を利用して、ちょっとずつ全体を把握することに努め、自分なりに厳選して買った本は以下の3冊。
c0213681_054176.jpg

ロッジ(600円)がでっぱさんから、田中小実昌(800円)がダンデライオンさんから、木山捷平(1300円)が北條さん/夏葉社・島田さんの箱から。値引きもしてもらったりしてありがとうございました。でっぱさんの箱には、他にジェニファー・イーガンの新刊があって興奮した。さすがでございます。あれはやはり買っとくべきだったかなあ、と後悔している。あと、岐阜の徒然舎さんのところにあった細野晴臣の文庫もほしかったけど、次に行ったときにはもう売れていて後悔。やっぱり、そうだよなあ。

時間はあっというまにすぎ、いつのまにか終了の16時になった。売り上げは絶好調で、予想をはるかに超える。40冊以上売れた「3冊500円コーナー」が大健闘だったが。それ以外の本も好調で、買ってもらえるとうれしいと思っていた本がよく売れた。藤子不二雄の漫画もやはり人気があり、特に『魔太郎』を買ってくれたおばあさんと『カンビュセスの籤』を買ってくれた少年のことが強く心に残っている。あと、最後にADLIFTさんが『野呂邦暢作品集』を男前な感じで買って下さった。いい本がほしかった人のもとにおさまっていくのがうれしいですね。

3冊500円コーナー以外で売れた本の記録はなんとか取っていたので以下それらを記しておく。

・常盤新平 『銀座旅日記』 (ちくま文庫)
・ガルシア=マルケス他 『エバは猫の中 ラテンアメリカ文学アンソロジー』 (サンリオ文庫)
・ガルシア=マルケス 『百年の孤独』 (新潮社)
・武田百合子 『富士日記(上)(中)(下)』 (中公文庫)
・出久根達郎 『作家の値段』 (講談社)
・ジョージ秋山 『WHO are YOU 中年ジョージ秋山物語』 (小学館)
・都築響一 『TOKYO STYLE』 (ちくま文庫)
・開高健 『開高健全ノンフィクション(5) 言葉ある曠野』 (文藝春秋)
・ブラッドベリ 『恐竜物語』 (新潮文庫)
・吉田秀和 『世界のピアニスト』 (新潮文庫)
・藤子・F・不二雄 『ドラえもん 巻頭まんが作品45』 (小学館)
・小津安二郎 『僕はトウフ屋だからトウフしか作らない』 (日本図書センター)
・台所でよむ村上春樹の会 『村上レシピバリューセット』 (飛鳥新社)
・阿部了/阿部直美 『おべんとうの時間』 (木楽舎)
・小沼丹 『黒いハンカチ』 (創元推理文庫)
・堀江敏幸 『もののはずみ』 (角川文庫)
・ボルヘス 『幻獣辞典』 (晶文社)
・カズオ・イシグロ 『夜想曲集』 (早川書房)
・佐藤雅彦編 『教科書に載った小説』 (ポプラ社)
・栗原亨 『廃墟の歩き方 探索篇』 (イースト・プレス)
・藤子不二雄A 『魔太郎がくる ①~⑧』 (中公文庫)
・『ドラえもんひみつ道具大事典』 (小学館)
・久生十蘭 『顎十郎捕物帳』 (朝日文庫)
・手塚治虫 『人間昆虫記』 (大都社)
・佐藤泰志 『そこのみにて輝く』 (河出文庫)
・『つげ義春作品集』 (日本文芸社)
・久世光彦 『蕭々館日録』 (中央公論新社)
・大竹昭子 『須賀敦子のヴェネツィア』 (河出書房新社)
・『向田邦子 暮しの愉しみ』 (新潮社)
・荒川洋治 『日記をつける』 (岩波現代文庫)
・深沢七郎 『言わなければよかったのに日記』 (中公文庫)
・山田正紀/恩田陸 『読書会』 (徳間文庫)
・角田光代 『いつも旅のなか』 (アクセス・パブリッシング)
・深沢七郎 『盆栽老人とその周辺』 (文春文庫)
・吉田篤弘/フジモトマサル 『という、はなし』 (筑摩書房)
・多和田葉子 『光とゼラチンのライプチッヒ』 (講談社)
・藤子不二雄 『藤子不二雄SF全短篇 第1巻 カンビュセスの籤』 (中央公論社)
・車谷長吉 『文士の魂・文士の生魑魅』 (新潮文庫)
・マッケン 『白魔』 (古典新訳文庫)
・ブローティガン 『愛のゆくえ』 (ハヤカワepi文庫)
・西崎憲編訳 『短篇小説日和』 (ちくま文庫)
・TOWER RECORDS 『NO MUSIC, NO LIFE. AD collective』 (マガジンハウス)
・奥泉光 『シューマンの指』 (講談社)
・エドワード・ゴーリー 『ギャシュリークラムのちびっ子たち』 (河出書房新社)
・松下竜一 『汝を子に迎えん 人を殺めし汝なれど』 (河出書房新社)
・タモリ 『TAMORI』 (ソニー)
・ボルヘス/カサレス 『ボルヘス怪奇譚集』 (晶文社)
・『野呂邦暢作品集』 (文藝春秋)
・田中小実昌 『世界酔いどれ紀行ふらふら』 (知恵の森文庫)

売れた冊数を数えてみたら、100冊を超えていたことがわかった。プラスチックケースが軽くなってブラボー。この達成感、プライスレス。

次回、源法院にて。
[PR]

by anglophile | 2013-06-24 23:46 | 一箱古本市 | Comments(4)
2013年 06月 22日
【BOOK DAY とやま】に参加します!
c0213681_212110.jpg

明日はいよいよ富山の一箱古本市。今年初めての出店で、県外遠征は初めてなので、少々興奮気味。空回りしそうなほどの気合いで参加してきます。天気は大丈夫、のはず。今降っている雨は止むよね? 準備の方はまだプラスチックケースに本を詰めただけ。値札貼りは今晩する予定。

どうしても文庫本が多めになってしまいますが、こんな感じのラインナップ。ワンパターンといえばワンパターン。気合いが空回っている証拠か。
c0213681_3235210.jpg

富山なので藤子不二雄の漫画も少し持っていきます。発想が短絡的なのは、やはり気合いが空回っているから? 単行本はこんな感じ。やはりワンパターンかも。
c0213681_324686.jpg

余裕があれば、CDなども少し持っていくかもしれません。あと、家宝のひとつがなぜか2冊あるので、そのうちの1冊を出品します。よろしければ会場でお手にとってみて下さい。
[PR]

by anglophile | 2013-06-22 04:09 | 一箱古本市 | Comments(0)
2013年 06月 14日
そわそわ
c0213681_21414171.jpg明日、早起きして富山に行く予定だが、それは来週の富山での一箱古本市の下見というわけではない。仕事でございます。なので、古本タイムはなさそう。残念すぎるので、今週その分の埋め合わせとして、前もって古本を買いに行ってきた。

・谷川徹三 『自伝抄』 (中公文庫) ¥100
 ※見開きに著者の写真が載っていて、それが谷川俊太郎にそっくり。と思ったら、谷川徹三はお父さんでした。それにしてもよく似ている。

・伊井直行 『本当の名前を捜しつづける彫刻の話』 (筑摩書房) ¥105
 ※去年、『さして重要でない一日』が講談社文芸文庫で復刊されたぐらいからちょっと気になっている作家。他にも何冊か買ってあるが積ん読中。

・西村弘治 『沈黙と音楽 フィッシャーとグールドの間』 (共同通信社) ¥105
 ※FM選書というシリーズの一冊。グールド関連書はけっこうまめにチェックしてきたつもりだけど、1985年に出たこの本のことは知らなかった。グールドについての文章は一部だけ。それを斜め読みしてみたけど、分かりにくい文章だったのでがっかり。

・コルタサル 『すべての火は火』 (水声社) ¥500
 ※「叢書アンデスの風」の一冊。このカバー(右掲)、かっこいい。

・スーザン・ソンタグ 『良心の領界』 (NTT出版) ¥1150
 ※ずっと探していた本なら半額でも積極的に。有名(?)な序文はずっと前に引用したことがある。ところで、この「領界」という言葉、耳慣れない言葉だが、専門用語か何かだろうか。英語では単に territory なんだけどね。

・永井豪 『バイオレンスジャック 完全版 全10巻』 (中央公論社) ¥2000
 ※『あばしり一家』も読んでみたいが、圧倒的な質感を誇るこれも気になっていた。愛蔵版で10巻もあるのね。タオルケットを上に敷けばベビーベッドぐらいにはなりそうな大きな塊。手頃な値段だったので、迷ったが買うことにした。

さて、一箱古本市の方は、出店申し込みも締め切られたようだ。出店者の発表もあって、なんと40店を超えたみたい。ちょっとしたお祭りですね。金沢からも源法院に出店されている方々が多く参加されるようだ。私も久しぶりなので気合いを入れて臨みたいと思います。どうぞよろしく。
[PR]

by anglophile | 2013-06-14 21:15 | 古本県外遠征 | Comments(0)
2013年 06月 08日
棕櫚の葉を風にそよがせよ
c0213681_18344250.jpg

古本道に勤しんで6年ほど経つが、野呂邦暢の本は本当に見つからない。と嘆息していたら、文遊社から『野呂邦暢小説集成1 棕櫚の葉を風にそよがせよ』という美しい本が出た。当然、買いますね。

冒頭に収められている表題作「棕櫚の葉を風にそよがせよ」がすばらしい。時折挿入される風景描写、情景描写が利いている。巻末を見ると、この中篇は1968年の『文学界』6月号に掲載されたとある。後に単行本『鳥たちの河口』(文藝春秋)に収められた。集英社文庫にも入ったが、どちらも未所持。ところで、「棕櫚の葉を風にそよがせよ」という題名はオーウェルの『葉蘭をそよがせよ』を想起させるが如何に? しかし、オーウェルの小説は邦訳が1984年に出ていて、野呂は80年に亡くなっているから、このタイトルは知らなかったはず。それとも原書で読んでいたのか。だとしてもここまで題名が似ることはないだろうな。

この「棕櫚の葉を風にそよがせよ」を読んでいて気になる一節に出会った。以下引用。
 倉庫からセメントを出して一人で軽トラックに積みこんだ。おくれていたセメントがきのう着いたのだ。この配達をすませたらきょうの勤めが終る。バックミラーに映る物のかげは、輪郭がナイフで刻んだようにくっきりときわだち、色彩も鮮かになるようである。フロントグラスごしに眺める風景はひたすら平凡なのに凸面鏡に反射した世界は浩一の目をみはらせる。また何気なく車の上から振りむくとき、ありふれた街路のたたずまいがはっとするほど彫りの深い翳りを帯びる。無関心に通過した街並が彼の背後にうつるとたちまち異様に華やかな別世界に変貌してしまうようである。
 それは罠にかかっていた獣がばねをはずされた瞬間、満身の力をこめて踊りあがる姿態に似ている。浩一をやりすごすまでは何喰わぬ顔で仮面をかぶっていた世界が、いったん彼の後ろにまわると息をのむばかりに光彩陸離とした世界に変る。だから気づかれないようにすばやく振りかえることが肝腎なのだ。彼をやりすごしたと安心していっせいに身慄いし灰色の埃を払いおとす瞬間をねらって敏捷に首をひねらなければこの世界の本当の顔はのぞけない。しかし振りかえっても一、二秒後には見られたと悟った背後のものどもが正面の世界と同じうす汚れた砂埃に早くもおおわれて、かすかな胸の悪さをもよおさせ始める。もう目に映るのは白っぽい砂塵にまみれた合歓の木の並木がさあらぬていで夏の午後の生ぬるい風に揺れている光景ばかりだ。(45-6頁)
時折このように筆者の視点が登場人物の周囲の風景にフォーカスする。そのフォーカスの強度が尋常ではない。で、何が気になったかというと、この一節と非常によく似たことをホーソーンが書いているのである。
... the best way to get a vivid impression and feeling of a landscape, is to sit down before it and read, or become otherwise absorbed in thought; for then, when your eyes happen to be attracted to the landscape, you seem to catch Nature at unawares, and see her before she has time to change her aspect. The effect lasts but for a single instant, and passes away almost as soon as you are conscious of it; but it is real, for that moment. It is as if you could overhear and understand what the trees are whispering to one another; as if you caught a glimpse of a face unveiled, which veils itself from every wilful glance. The mystery is revealed, and after a breath or two, becomes just as much a mystery as before. (Twenty Days with Julian & Little Bunny, by Papa, p. 73)

...風景というものを鮮明に捉え感じるには、その前に腰を下ろし本を読む、または思索に没頭してみるとよい。というのも、何気ないふりをしてその風景にふと目をやると、そこに無防備になった自然の姿を見つけることができるからだ。そのとき自然はありのままの姿をさらしている。ところがその状態は一瞬のうちに変化し、こちらが見ていることを悟るや自然は姿を変えてしまう。惜しいかな、その一瞬は自然のまごうかたなき真の姿を捉えていた。まるで木々がお互いにささやき合っているのを盗み聞きしたかのよう。ベールの向こうから顔がちらりと見えた瞬間である。しかし意識して捉えようとする目にはその表情は決して見えない。神秘は明かされるが、こちらが息を呑んだ途端、またもとのベールに包まれてしまう。
これはホーソーンのエッセイを集めた、全集版で言えば、The American Notebooks という分厚い巻に入っている文章で、10年前に Twenty Days with Julian & Little Bunny, by Papa というタイトルで単行本化もされている。ホーソーンの小説は苦手だが、この手の随筆は嫌いではない。

アメリカ文学史の源泉に不動の地位を確保している作家の150年前の文章と、その本が手に入りづらい日本のある現代作家の文章との興味深い一致。
[PR]

by anglophile | 2013-06-08 18:26 | 読書 | Comments(0)