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2011年 04月 29日
今日の105円棚
・小松左京 『役に立つハエ 小松左京ショートショート全集③』 (ハルキ文庫)
・筒井康隆編 『’71日本SFベスト集成』 (徳間文庫)
・香老舗松栄堂広報室編 『王朝の香り 現代の源氏物語絵とエッセイ』 (青幻舎)
・諏訪優訳編 『ギンズバーグ詩集 増補改訂版』 (思潮社)

最近ちょっとばかし注目しているハルキ文庫。「全集③」とあったので、じゃあ①とか②とかも集めてみたくなるじゃないですか。で、ショートショートだから星新一だとおもっていたら、実は小松左京だったというオチ。これでは古本検定10級も受からないな。

『王朝の香り』は、小ぶりなのにちょっとした重量感が魅力的な京都書院アーツコレクションに入っているものの新装版。この中に片岡義男のエッセイ「英語で読む源氏」が入っていたので興味を惹かれた。わずか3ページのエッセイだがピリッとしていてよい。
 日本に関する多くのことについて、僕は英語をとおして学んだ。英語をとおしてとは、抽象化して、と言いかえてもいい。そしてさらに、抽象化してとは、余計な邪魔者なしに、と言いかえることが出来る。
 たとえば、『源氏物語』に関して、邪魔になるものと言えば、「紫式部」「日本そして世界初の長編小説」「光源氏」「平安時代」「宮廷生活」といった日本語だ。このような単語は、すべて、大学入学試験につながった高等学校の国語の授業を僕に連想させ、『源氏物語』とのあいだに距離を作ってしまう。と同時に、いま列挙したような言葉をつないでいくと、『源氏物語』に関しての、きわめて皮相的で陳腐な理解が頭のなかに出来てしまい、それもまた真の『源氏物語』から僕を遠ざける。
 すべてが英語になってしまうと、以上のようなかたちでの邪魔をされることなしに、『源氏物語』というものの理解の深みへ、僕は到達することが出来る。(185頁)
 日本についてなにごともいちばんよく知っているのは日本人である我々だ、という凡庸な確信のなかに、圧倒的多数の日本人たちは生きている。その日本人が日本語で読めば、なにについてであれ、たちどころに真の正しい理解を手に入れるはずだという単なる思いこみのなかで、じつはおそろし皮相的で悲劇的なまでに陳腐な理解というものの表面をただ撫でているだけにしか過ぎないことに、その圧倒的に多くの人たちはいつまでも気づかない。
 日本のあらゆることがらに関して、きわめて正しくてしかも深い理解を、英語だけをとおして手に入れることは完璧に可能だ。日本に関して、日本語を経由せずに到達する理解の深度というものが、日本語の外の世界に確実に存在している。(186-7頁)
「完璧に可能だ」と言い切れるところがすごい。このエッセイが収められているのと収められていないのとでは、この本の価値は大きく変わるだろうとおもう。
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by anglophile | 2011-04-29 22:52 | 古本 | Comments(2)
2011年 04月 28日
ジャガイモか熱帯植物か
ポール・オースターと柴田元幸の対談を見た。

http://asiasociety.org/video/arts-culture/paul-auster-and-motoyuki-shibata-complete

1時間14分のボリューム。冒頭では、2人が Oracle Night を段落ごとに英語と日本語で交互に朗読する様子が収録されている。動く2人の姿を見るのもはじめてだったので、おもしろく見ることができた。英語の勉強にもなりました。以下、記憶に残った話をメモしておく。

・翻訳家とはどうあるべきかという質問に対する柴田の答えは見事なものだった。オースターも感心していた模様。かいつまんで書いておくと、「通りに子供が何人かいて、その子供たちは高い塀の前にいるとしよう。その塀にはハシゴが立てかけてある。塀の向こう側では何かおもしろいことが行われているが、そのハシゴには子供一人しか上れない。翻訳者というのは、そのハシゴに上ることができた子供のようなものである。塀の向こう側で行われていることを下にいる他の子供たちに伝える役目を担っているわけだが、下にいる子供たちには塀の向こう側は見えないわけだから、何を伝えるかはハシゴの上にいる子供の自由である。しかし、そのときにヘンなウソをついたり、事実を曲げたりしない方がいい。できるだけそのままを伝えるようにすべきである。翻訳家の役目も同じである」という話。

・翻訳という点でいうと、作家には2種類ある。外国語に翻訳しやすい「ポテト・タイプ」(どこでも育つから)とほとんど翻訳不可能な「トロピカルフラワー・タイプ」(育つ場所が限られているから)である。オースター自身は、自分は「ポテト・タイプ」だといっている。これは会場からの質問から出た話だが、ゲーテが使った例え話らしい。

・柴田は1984年から85年(年齢は30代前半)にかけてアメリカに留学(イェール大学?)していたそうだが、自信の英語運用能力の不十分さに気づかされたという。あと、留学しなければ読むことはなかったであろう文学作品(リチャードソンの『クラリッサ』やミルトンの『失楽園』)を読めたのがよかったともいっている。そして、おそらくこの留学期間中に柴田はオースターの『ガラスの街』(1985年刊)に出会ったのだろうと推測する。それから数年後にこの作品を訳すことになったが、今ではよく知られているように、オースターのデビュー作はすでに日本で翻訳権が取られていたのでボツになったのだった。その翻訳は、2007年の『coyote No. 21』に発表されるまで、じつに20年近くを要したことになる。

・以前ここで触れたテリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』公開の顛末を描いた『バトル・オブ・ブラジル』の翻訳も、有名になる以前にいろいろ訳していた本の1冊だったことが語られている。

・野球好きのオースターから明かされるMLBの「ワールド・シリーズ」の名称の由来にへえーとおもった次第。

これで、とりあえず『モンキー・ビジネス』最新号を読んだ気分になった。
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by anglophile | 2011-04-28 02:41 | 読書 | Comments(0)
2011年 04月 27日
存在が面白い本
再びクラフト・エヴィング商會『おかしな本棚』より。
『フィネガン徹夜祭』は、十代の終わりに読んで(あまりに難解ゆえ読んだといえるかどうか)、このような本が世に存在すること自体に驚いた。存在が面白かった。存在が面白い本は、すぐに消えてなくなるから確保しておく必要がある。読むに越したことはないけれど、目をこらして読まなくてもいい。そこに存在していることが大事であって、だから、たまに確認して「おお、いるねぇ」と声をかけるだけでいい。(52頁)
私にとっての不動の「存在が面白い本」は、William Gaddis の The Recognitions である。16年前に留学先のイギリスを離れる間際に買った一冊、というか一品。これを買って帰らないと、二度と手に入れる機会がないのではとおもった結果の衝動買いであった。

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イギリスにいた当時、この956ページの大著は大体どこの本屋の棚にもあったようにおもう。その分厚さから漂ってくる雰囲気は異様なものだった。無視しようとおもっても、作家別に並んでいる本棚のGのところに来ると勝手に目に飛び込んでくる。次第に意識せざるを得なかったが、それでもまったくこの作家については知らなかったので、手を出すまでにはいたらなかった。ところが、あるとき大学のゼミで、そのとき教えてもらっていたイギリス人の先生の口からこの本の名前が飛び出したのだった。

THE great 20th century novel!

と、言ったのを聞き逃さなかった。やはりなんだかすごい本であることはわかった。かといって、すぐに買って読めるような本でもなく、結局帰国間際に買うことになった。

現在、家の本棚の中にあっても、その存在感は抜群である。文字通り「不動」であって、ほとんど触れられることはない。でーん、と本棚の中央に据えてある。威圧感があるので、気軽に「おお、いるねぇ」とは声をかけられない。もう16年も一つ屋根の下にいるのに他人のようでもある。

あのとき、日本に向かう飛行機の中で読み始めてはみたが、まったく物語の流れが見えず、7ページで挫折した。日本に戻ってからも、何回か挑戦してみたが、7ページを超えることはなかった。つるつるのすべり台を登ろうとしているかのようだ。まったく手がかりなし。結局、なにか強力な理由がないと、とてもじゃないが読めそうにない。でも、自分としては、いつか読むんだろうなあ、とはおもっている。今ではネット上でこの本に対する註釈集(annotations)が公開されているらしい。一方、万が一にも読んでしまったら、なにかの魔法が解けるようでいやなのも真実。このまま読まないというのももちろん選択肢のひとつではある。そして、結局こうやって、ああだこうだいってるのが楽しいのである。

著者の William Gaddis は、その作風からピンチョンと同一人物なのではないかという噂も立った人である。(当然のことながら、)結局それは違っていたようだ。全部で5冊の小説を残し、1998年に亡くなった。

The Recognitions (1955)
J R (1975)
Carpenter's Gothic (1985)
A Frolic of His Own (1994)
Agapē Agape (1998, posthumously published in 2002)

3冊目の Carpenter's Gothic は、ピンチョンの『逆光』の訳者である木原善彦氏が『カーペンターズ・ゴシック』として2000年に訳されている。このことを考えれば、The Recognitions が訳される可能性は10%ぐらいあるとおもうのだが、どうでしょう。分量的には、『逆光』の方が多いわけだし、あながち無理な話ではないだろう。越川芳明氏の『アメリカの彼方へ―ピンチョン以降の現代アメリカ文学』(自由國民社、1994年)にもこの本について少しだけ触れられていたが、いま手元にないので詳しくは書けない。

ちなみに、ボリュームは落ちるが似たような想い出のある本に、スコットランド出身の作家 Alasdair Gray の Lanark: A Life in Four Books があるが、これは2007年に見事『ラナーク―四巻からなる伝記』として翻訳された。
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by anglophile | 2011-04-27 06:43 | 読書 | Comments(2)
2011年 04月 26日
おかしな本棚
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クラフト・エヴィング商會の新刊『おかしな本棚』(朝日新聞出版)を読んだ。今年の私的ベストテン確定の一冊であった。他人の本棚にある本の背表紙を眺めることのなんと楽しいことか!

私の場合、古本屋の本棚に心弾むことはいうまでもなく、他の方のブログで本棚の写真などがアップされているとパソコンの画面をのぞきこむようにして見る、見る。そして、拡大して画像が粗くなるともどかしく感じる。ついでにいえば、家にある都築響一『TOKYO STYLE』に貼ってある付箋は、すべて本棚が写っているページを示すものだ。

珠玉の言葉を繋留しておく。
ぼくにとって本棚とは「読み終えた本」を保管しておくものではなく、まだ読んでいない本を、その本を読みたいと思ったときの記憶と一緒に並べておくものだ。(3頁)
 いまはインターネットによって、容易に本が見つかるし、ネット上で見つけてから手に届くまでの待ち時間は、なんと「ひとねむり」。夜にオーダーし、ひとねむりして目を覚ますと、もう届いている。ありえないありがたさ。
 が、ありがたいことは、おおむね何かと引き換えになっていて、結論を先に行ってしまうと、我々はどうやら「読めない」を失ってしまったらしい。もう少し補足すると、「読めない時間」を失った。おかしなことである。待ち時間を「ひとねむり」にまで短縮して時間を稼いだのに、稼いだはずの「時間」が失われている。
 というか、失われて初めて輪郭が得られたのは、どうやら、この世でいちばん価値のある時間は待ち時間であるということだ。待たされるあいだの「空虚」「期待」「予測」「妄想」「やきもき」「ちくしょう」「あんなか?」「こんなか?」等々が、待ち望んだ書物を彩り、絶妙のスパイスになる。そして、それでもなお待たされたりすると、予測や妄想が暴走し、読んでもいないのに誤読を始め、ついにはあたらしいものを勝手に生み出してしまう。どうしても読めないなら自分が書く---とペンを握る。こうして、人は待ち時間によって芸術家になった。(116-7頁)
本は「探すこと」がいちばんの醍醐味です。その次に「なかなか読めない」醍醐味があり、三番目にようやく「読む」醍醐味があります。(171頁)

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by anglophile | 2011-04-26 15:04 | 読書 | Comments(0)
2011年 04月 25日
一箱古本市のことなど
昨日は源法院で毎月恒例となりつつある一箱古本市があり、私は午前中仕事があったので出店はできなかったが、昼すぎに仕事が終わったので、そのあとふらっと寄ることに。常連の方を中心に、今回は15箱揃っての開店だったようだ。到着後、しばらく皆さんと歓談。いろいろと楽しい話ができました。声をかけていただいた皆様、どうもありがとうございました。来月はぜひ参加しますので、よろしくお願いします。

本の方は、常連のおろおろ散歩道さんから1冊購入。

・ウディ・アレン 『これでおあいこ』 (河出文庫)

この本は、ちょうど読んだばかりの『おかしな本棚』(この本については明日にでも)に出てきたのだった。吉田さんが多大な影響を受けたという「メッタリング・リスト」をあとで読んでみよう。

さて、そのあと、妻に連絡を取ったら、まわるすし屋に集合ということになって、松任アピタの近くまで車を走らせる。まわるすしを10皿ほど食べてから、別行動に。慣例にならって、松任まで来たのなら小松まで行かないと松任まで来た意味がないということで、さらに俺、南進して、小松のブへ。

小松店は「春なんとかセール」をやっていた。105円の本が80円になるという。第2弾ということだったが、ということは、先週も第1弾として何かのセールをやっていたということだろう。そのことはあまり考えないようにして、棚を見て回り、何冊か買った。

・S・シェパード 『ローリング・サンダー航海日誌』 (河出文庫)
・フジモトマサル 『ウール100%』 (文化出版局)
・野田秀樹 『ゼンダ城の虜』 (白水社)

前から狙っていた『ローリング・サンダー航海日誌』がやっと手に入った。『ゼンダ城の虜』もまた『おかしな本棚』に出てきた本。しばらくこの本に出てくる本を追っかけていくような気がする。
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by anglophile | 2011-04-25 18:58 | 一箱古本市 | Comments(0)
2011年 04月 23日
今日買った本
・久世光彦 『蝶とヒットラー』 (ハルキ文庫)
・井伏鱒二 『太宰治』 (筑摩書房)
・ウィリアム・サロイヤン 『わが名はアラム』 (晶文社)
・町田康 『爆発道祖神』 (角川書店)
・チェーホフ 『チェーホフの手帖』 (創元選書)

・クラフト・エヴィング商會 『おかしな本棚』 (朝日新聞出版)
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by anglophile | 2011-04-23 23:56 | 古本 | Comments(0)
2011年 04月 21日
Like a little spider, I'm climbing the insurmountable.
仕事でヘロヘロ。この仕事、向いてないな、と独り言。なんとかひと山超したが、まだふた山ほど残っている。のどが渇いたので、帰りにブックオフへ。

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1992年出版のリービ英雄のデビュー作だが、単行本をこれまだ見たことがなかった。濃紫とオレンジの配合が超かっこいい。山のことを忘れさせてくれる。
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by anglophile | 2011-04-21 22:08 | 古本 | Comments(2)
2011年 04月 17日
今日買った本
今日は午前中、散髪に行ってきた。昨年8月以来伸び放題だったので、バッサリ切ってスッキリした。午後からは、オヨヨ書林せせらぎ通り店に行ってみた。今年3月以来だった。入り口の100円均一は少し補充されていた模様だったが、アンテナは反応せず。奥の方は前に来たときにくらべると、整理されて本の量も増えている感じがした。楽しい気分で丁寧に見て回る。店長さんの好みが出ていて興味深い。宮澤賢治ファンでいらっしゃるのか、ある棚には賢治関連の本がたくさんあった。あと、吉行淳之介の本も増量された感じで、「吉行淳之介コーナー」が設けられていた。

・山本容朗編 『吉行淳之介の研究』 (実業之日本社) ¥500
・杉浦銀策 『メルヴィル―破滅への航海者』 (冬樹社) ¥300
・サマセット・モーム 『秘密諜報部員』 (創元推理文庫) ¥100

買いやすい値段が魅力的です。月に1回は行きたいな。

そのあと、おもうところあって金沢駅前のフォーラスに行った。「おもうところ」の部分は空振りだったが、久しぶりのタワーレコードはまあまあ楽しめた。レディオヘッドの新しいCDが出たばっかりのようで、結局CDは買わなかったけど、視聴コーナーの横にあった「レディオヘッド新聞」(?)をもらってきた。なんとなく紙ものということで。あと、グールドの未発表ライブのCDも出ていたが、ソロ演奏ではないようなので見送った。ところで、グールドの未発表音源というのはまだいろいろあるのかないのか気になるところ。

帰りに近くの「ブ」も寄ってきた。

・イアン・ハミルトン 『サリンジャーをつかまえて』 (文藝春秋)
・嵐山光三郎 『人妻魂』 (マガジンハウス)

夜、NHK教育でカズオ・イシグロの特集をやっていた。徹夜仕事があるので、半分だけ見た。長崎のロケなどもあってなかなか興味深かった。この番組のおかげで、2回挫折している Never Let Me Go を今度は読めそうな気がする、とこっそりつぶやいておく。
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by anglophile | 2011-04-17 23:55 | 古本 | Comments(0)
2011年 04月 16日
今日買った本
・倉橋由美子 『アマノン国往還記』 (新潮文庫)
・ゴールズワージー 『フォーサイト家物語 第一巻』 (角川文庫)
・アンドニオ・ダブッキ 『インド夜想曲』 (白水uブックス)
・松岡正剛 『白川静 漢字の世界観』 (平凡社新書)
・佐藤弓生 『アクリリックサマー』 (沖積舎)
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by anglophile | 2011-04-16 22:16 | 古本 | Comments(0)
2011年 04月 15日
今日買った本
・曲亭馬琴 『現代語訳 南総里見八犬伝(上)』 (白井喬二訳、河出文庫)
・三島由紀夫 『文学的人生論』 (知恵の森文庫)
・ヘミングウェイ 『われらの時代』 (福武文庫)
・川本三郎 『日本映画を歩く―ロケ地を訪ねて』 (中公文庫)
・川本三郎 『君美わしく―戦後日本映画女優讃』 (文藝春秋)
・荒木経惟/町田康 『俺、南進して。』 (新潮社)
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by anglophile | 2011-04-15 20:34 | 古本 | Comments(0)