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古本万歩計 Of what is lost, all I wish to recover is the daily availability of my writing, lines capable of grasping me by the hair and lifting me up when I'm at the end of my strength. - Roberto Bolano

雪降る午後

思ったほどの大雪にならず、なんだよ予報には「暴風雪」と書いてあったじゃないかあ、とちょっと落胆しながら、今朝は『名短篇 新潮創刊一〇〇周年記念 通巻一二〇〇号記念』(新潮社)に収められている川崎長太郎「ひかげ咲き」を読んだのだった。まさに「名短篇」の名にふさわしい短篇だった。

午後の遅い時間に、妻に頼まれ、灯油を調達しに出たはずだったが、そんな生活必需品はあとまわしにして、本屋に行ってしまう。「休日」と「外出」という条件が重なると、本を買いに行かずにはおれない。どうも優先順位の立て方がおかしい、とわかってはいるがコントロールができない。

川崎長太郎の文庫が先月出ていたはずなので、柿木畠のうつのみや本店に買いに行くことにする。いつも店前の駐車場に車を止めるのだが、今日は雪が降っていて駐車場の係のおじさんがいないので、そのままいつものスペースに止めさせてもらう。1階で別の購入予定本である諏訪哲史『偏愛蔵書室』(国書刊行会)を探すが見当たらない。他の大型書店には置いてなくて、うつのみやなら、と思ったが、ここにも置いてなかった。うう、残念。1階の隅にある国書刊行会スペース自体がなくなっていたのでむしろそのことのほうが残念。次に文庫を見に、エレベーターで2階へ。いろいろと見てまわって、お目当ての川崎長太郎『泡/裸木 川崎長太郎花街小説集』(講談社文芸文庫)と、その他に林望『増補 書藪巡歴』(ちくま文庫)と円城塔『バナナ剥きには最適の日々』(ハヤカワ文庫)も買うことにする。無論、3冊とも帯付である。『書藪巡歴』はどう考えてもおもしろそう。以前は新潮文庫に入っていたということだが知らなかったなあ。あと、ハヤカワ文庫のカバーデザインには垢抜けた感じがあって無視できないものがある。

雪降る午後_c0213681_2345044.jpgこのあと、新竪に移ったらしいオヨヨ書林に行くつもりだったが、予定を変更して久しぶりにせせらぎさんに行ってみることにした。もう日は落ちている。店内に入っていき、せせらぎさんにご挨拶。何人かお客さんがいた。店内の棚の配置などが以前と少し変わっていて、前は入り口左のスペースにあった文庫棚が店内右奥にあった。その文庫棚で、未所持だった楠見朋彦『塚本邦雄の青春』(ウェッジ文庫)を見つける。500円だったが帯付だったので買うことにする。その横の外国文学棚には、『ユリイカ』のピンチョン特集号が300円であった。もう持っているので自制したが、昔なら買っていただろう。この中に収められているピンチョンがとある学生に宛てて書いた手紙(アフリカのホッテントット族に関する内容)はピンチョン関連の必読文献である。

さて、店内中央には以前はなかった本棚もあり、ペーパーバックとか古本関連本などが並べられていて、そこで古本アンテナが黒いハードカバーの本に反応した。取り出してみると、それは『書影でたどる関西の出版100 明治・大正・昭和の珍本稀書』(創元社)だった。ずっと前に善行堂で山本さんに見せてもらったことがあった。表紙が片側だけ貼り付けになっていて開きやすくなっているのだ。高価な本だから今まで購入できずにいた。やっぱり安くはないだろうなあと思って値札を見たら、予想を上回る安さに思わず「うおっ!」と驚きの小声を上げてしまった。したが、すぐにその理由がわかった。函欠ということもあるのだろうが、そういうことだったのかあ。ま、でも納得して購入することができた。ふんだんに掲載されている書影は見ていて飽きない。

帰り道、あやうく灯油を買い忘れるところだった。
by anglophile | 2014-12-14 21:50 | 古本 | Comments(0)