2012年 10月 29日
10月後半の古本と読書
<10月某日>
仕事帰りにブックマーケットへ。J・G・バラード『溺れた巨人』(創元SF文庫)、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、『高い城の男』、『ユービック』(ハヤカワSF文庫)を630円で。しばらく前に、バラードの短篇「溺れた巨人」に言及した文章を読んだのだったが、それが誰の文章だったのかが思い出せない。ディックのハヤカワ文庫新装幀版は目の覚めるようなかっこよさ。ちなみに、20世紀末に東浩紀の影響で『ユービック』だけペーパーバックで読んだがあんまりピンとこなかった。
<10月某日>
鳴和で宮川寅雄『秋艸道人随聞』(中公文庫)、ブックオフで菊地信義『装幀思案』(角川学芸出版)を各105円で。鳴和にはここしばらくめぼしい本が出てこないので、ちょっとさびしい。と思っているのは私だけ?
<10月某日>
久しぶりに文圃閣へ。阿部昭『人生の一日』(中央公論社)、山口瞳『還暦老人憂愁日記』(新潮社)、坪内稔典『坪内稔典の俳句の授業』(黎明書房)、『文藝別冊 須賀敦子』(河出書房新社)、『別冊映画秘宝 「キル・ビル」&タランティーノ・ムービーインサイダー』、『別冊映画秘宝 「キル・ビルVol.2」&タランティーノ・ムービーインサイダー』(洋泉社)を3冊500円で買う。『別冊映画秘宝』は『キル・ビル』特集だが、町山智浩氏が『レザボア・ドッグ』と『パルプ・フィクション』について書いている。氏曰く、「90年代で最も重要な映画、それは『パルプ・フィクション』である」(17頁)。ふふふふふ。一方、『キル・ビル』を私はまだ見ていない。
<10月某日>
一日中眠かったのは、昨晩スカパーで『アウトレイジ』を見ていたから。『ビヨンド』も見たいが、まずは第1作から。なんて思っていたら、ラストシーンに来て、前に見ていたことを思い出した。おかしいなあ、一体いつ見たんだろう? 全然覚えていない。
<10月某日>
加能屋さんの武蔵店を再訪。お店の前に駐車スペースがあることが前回分かったのでそこに車を止めさせてもらった。助かります。そういえば、数日前の朝日新聞地方欄だったかに加能屋さんの紹介記事が出ていた。店番をしている若い女性の方の写真が載っていた。今回、新しい本が少しだけ増えていた気がする。きれいな状態のW・サイファー『文学とテクノロジー』(研究社)を500円で購入した。
<10月某日>
来月の新刊チェックをしていたら、河出からついにダレルのアヴィニョン・クインテットが出ることを知った。アマゾンで検索してみたら、全5巻がすでに登録されている! それによると、刊行予定は次のとおり。第1巻『ムッシュー』(2012年11月)、第2巻『リヴィア』(2013年5月)、第3巻『コンスタンス』(2013年12月)、第4巻『セバスチャン』(2014年6月)、第5巻『クインクス』(2014年11月)。半年に1冊のペースといったところか。完訳を祈りたいところ。ちなみに、昔、新聞広告に刊行予告が載った時は、訳者が宮脇孝雄となっていたが、どうやら変更になったようだ。
<10月某日>
夜、スカパーで『キル・ビル』をやっていた。ユマ・サーマンはいつもながらにキュート。栗山千秋があやつる鉄球に鎖が付いた武器もすごかった。が、映画の設定自体がかなり強引で、けっこうグダグダな印象を受けた。タランティーノはそんなこと、気にはしてないだろうけど。
<10月某日>
ブックオフ北町店へ。『文藝別冊 山口瞳』(河出書房新社)、呉智英『言葉の常備薬』(双葉社)、坪内稔典『カバに会う 日本全国河馬めぐり』(岩波書店)、水芦光子『一筋のふしぎな糸』(北國新聞社)、藤原新也『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』(東京書籍)を20%引きの420円で。
<10月28日(日)>
日曜日だが仕事がある日。空には灰色の雲。仕事はあったが、空き時間を自主的に設けて、古本が集う場所へ。なぜなら、「現代社会の枠組みから少しくらい外れていてもそれなりに楽しく生きていけるぞ的な感覚が活性化され」(@穂村弘)たから。まず、柿の木畠にあるうつのみや書店横で開かれるという「ブックECO金沢 まちなかフェスティバル2012」を訪れる。市内の古書店が世話係として、家庭や施設から集まってきた古本を並べるというイベント。2週間ほど前に、家に回覧板が回ってきて、近所の公民館に不要の本があれば持ってきて下さいという案内チラシが入っていた。古本に興味のない妻が気を利かせて教えてくれたのだった。会場では、小雨がぱらつく中、テントの中に本が並べられ、けっこう賑わっていた。係の一人としてオヨヨさんがいらっしゃったのでご挨拶申し上げる。並べられていた本の量はそれほど多いわけではないが、何冊か欲しい本があってよかった。購入するというよりも、文庫本は1冊50円、単行本は100円を目安に寄付をするという形らしい。小銭を掻き集めて、植草甚一『ぼくは散歩と雑学がすき』(晶文社)、深沢七郎『人間滅亡的人生案内』(河出書房新社)、小林清之介『小さな博物誌』(毎日新聞社)、室生犀星『舌を噛み切った女』(新潮文庫)、小堀杏奴『朽葉色のショオル』(旺文社文庫)の5冊(やや汚れあり)と交換した。『小さな博物誌』の装幀は山高登。続いて向かうは源法院。今日は今年最後の一箱古本市が行われることになっている。私の方は夜の納会にも参加できないし、今年最後でもあるので、少しだけ顔を出すことにした。生憎の雨で出店者の皆さんは本堂内。あうん堂さんだけが呼び込みのために門前のテントで出店されていた。おろおろさんもちょうど外にいらっしゃり、挨拶がてらしばらく話をしていると、向こうの方からあうん堂さんがおもむろに本のかたまりを持ってこられ、箱に並べ始めたのだが、なんとそのかたまりは『別冊本の雑誌16 古本の雑誌』(本の雑誌社)だった! 実は、数日前から市内の主な書店をまわっていたのだがどこにも入荷しておらず、悶々としていたのだ。まさかここで『古本の雑誌』を買えるとは思ってもいなかったなあ。しかも1割引。なんと20冊も仕入れられたそうだ。あやうく「3冊もらいます!」と言いそうになった。あうん堂さんが本の雑誌社の本を取り扱っていることを忘れていた。ちなみに、ちょっと前に出た同社刊行の『SF挿絵画家の時代』もちゃんと入荷済みとのこと。すばらしい! ということで、県内で『古本の雑誌』を手にしたい方はあうん堂さんに行きましょう。めでたく1冊確保してから、本堂内の方も見て回る。今年最後ということで出店数は最大。常連の方々はもちろんのこと、古本よあけさんやなつめ舎さんもいらっしゃった。よあけさんの箱にちょっと気になる本があったけど、他のお客さんでけっこう混んでいて、手に取るタイミングを逸した。本堂内はなかなかの熱気で、古本の香気に十分に触れることができた。帰り際に、いつもサンドイッチなどを出していらっしゃるYaekoSanでアボカドサンドイッチを買って仕事場へと戻ることに。仕事そっちのけで、『古本の雑誌』を読み始めたのは言うまでもない。巻頭の爆笑座談会は「古本者けもの道すごろく」作成の裏話。爆笑の連続。ノリは『本棚探偵』シリーズに通じるものがある。その他にも座談会が2つ組まれており、どれも面白かった。帰宅は夜の10時を過ぎていた。