2011年 02月 24日
海炭市叙景
少し早めに到着。上演開始時間まで、入り口に置かれている古本コーナーを見る。映画館ということで、映画関連本の出品が多かった。残念ながら、今回はアンテナにひっかかるものがなかった。
さて、観客の方は、私を含めて15人ほど。平日のわりには、多い方ではなかっただろうか。12時40分、私にとっての初シネモンドが開演。「まだ若い廃墟」「ネコを抱いたばあさん」「黒い森」「裂けた爪」「裸足」の順。原作を読んだ人にとっては、18話ある原作から選ばれたこれらの5つのエピソードがどのように展開するのかがひとつの見所だろう。
ロングショットが多用されていたため、1シーンごとに見入った。演じる人たちの一人ひとりの顔の表情もよかった。あと、映画館という場所だったからだとおもうが、登場人物たちが立てる1つ1つの音も際立っていたようにおもう。兄妹がご飯を食べる音、その箸が茶碗にあたる音、老婆がすするみそ汁の音、むっくり太ったネコがキャットフードを食べる音、台所で水をごくごく飲む音、などなど。そして、ラスト直前の路面電車内のシーン。じいんときた。
帰り際にパンフレットを購入した。出費がかさんだものの、これがなかなかよかった。
<表紙>
<裏表紙>
最初、受付にこのパンフレットが置いてあるのを見たとき、なんで地図が置いてあるんだろうとおもったが、よく見たらパンフレットだった。小学館文庫の函館山を写した表紙の印象が強かったので、このパンフレットの表紙には意表をつかれた。この地図みたいなものは、どうやら原作者自身が、小説執筆にあたって作成したものらしい。このことは、パンフレットにあった岡崎武志さんの文章を読んでわかったのだった。
函館文学館には佐藤泰志のコーナーがあり、直筆原稿や遺品、函館の市街地図をベースに佐藤が頭の中で作り上げた「海炭市」の克明な地図があった。(「あなたがたは最後まで立ってはならない」)そして、この地図(裏表紙の方)に「海炭市叙景」の文字が見える。これは、この映画のポスターやチラシに使われている「海炭市叙景」のタイトル文字にも使われている。