2010年 12月 30日
Roberto Bolaño, "The Savage Detectives"
この第2部は、様々な人物たちへのインタビューで構成されている。これらの人物たちは皆、主人公であるアルトゥーロ・ベラーノとウリセス・リマの2人と何らかの接点を持っている。したがって、第2部を読み進めていくことで、読者はベラーノとリマの足跡をたどることになる。しかし同時に、この2人の方は、1920年代に実在したとされるメキシコの前衛詩人セサレア・ティナヘーロの足跡をたどっていることになっているので、読者は必然的に2つの探索を同時に引き受けていくことになる。だからついつい先を読みたくなる。巧いもんだなあとおもう。
さらに、そのインタビューがなされた期間が、1976年から1996年の20年間に亘っているから、ハンパじゃない。また、1人の登場人物へのインタビューが完結して語られることは少なく、長いもの(であるがゆえに重要なもの)はいくつかに分割されて配置されており、その合間にほかの登場人物たちへのインタビューがさらに挿入されるという形式になっている。時間も多少行ったり来たりする。これは明らかに意図的なもので、焦らされること頻り。「ボラーニョーっ!」と叫びたくなるくらい。でもまあ、少なくとも、この作家が語りの形式に非常にこだわっているということがよくわかるし、私自身もそういう意匠は嫌いではない。
これらのインタビューのなかで最も登場回数の多いのがアマデオ・サルバティエラという人物。この人物は、セサレア・ティナヘーロをよく知る人物なので、最重要人物だといっていいかもしれない。彼の口から、ベラーノとリマが彼を訪問した時の様子が語られる。サルバティエラの書斎で、唯一セサレア・ティナヘーロが編集していた『カボルカ』という雑誌をサルバティエラが探す描写は、古本好きにとってはたまらないかもしれない。
... I opened the file and began to rummage through the papers, looking for the only copy I had of Caborca, the magazine Cesárea had edited with so many secrecy and excitement. (p. 207)こういう失われた詩誌の発掘みたいな話は大好きだ。早く先を読みたい、とおもうのだが、サルバティエラのインタビューはすぐに他の人物へのインタビューの挿入によって中断されるのであった。ボラーニョー!