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古本万歩計 Of what is lost, all I wish to recover is the daily availability of my writing, lines capable of grasping me by the hair and lifting me up when I'm at the end of my strength. - Roberto Bolano

ときには道に迷うことも大事   

今日からブックオフの「20周年大感謝祭」が始まるので少し遠出してその様子を見てきた。あんまり期待していなかったのだが、案の定、どこも「単行本2冊で1200円」とか「文庫・新書が1冊250円」というおなじみのセール内容だった。2、3軒まわって、

・高橋源一郎 『日本文学盛衰史』 (講談社文庫)
・『カフカ・セレクションⅡ』 (ちくま文庫)
・O.ワイルドほか 『ゲイ短編小説集』 (平凡社ライブラリー)
・ピーター・ケアリー 『オスカーとルシンダ』 (DHC)
・ピーター・ケアリー 『ケリー・ギャングの真実の歴史』 (早川書房)
・虫明亜呂無 『虫明亜呂無の本・2 野を駈ける光』 (筑摩書房)

などを拾う。『ゲイ短編小説集』はちょっとストレートな書名だが、「英米短篇集」のひとつとして考えてよい。ワイルドの「幸福な王子」とかモームの「ルイーズ」が収録されていて、へぇーとおもう。これらも広義のゲイ小説ということなのだろう。なかなかおもしろい解釈だとおもう。『オスカーとルシンダ』と『ケリー・ギャング~』はどちらもブッカー賞受賞作。ひとりの作家が2度ブッカー賞を受賞したのは、このピーター・ケアリーとJ.M.クッツェーだけだ。虫明亜呂無の本は、1と3を前に見つけたので、2があってちょうど揃った。でも、私は競馬はまったくわからないのであった。

今日のハイライトは実は上のブックオフではなく、2軒目から3軒目に行く途中、道に迷ってしまったおかげで発見することになった一軒の小さな古本屋である。この店、大通りには面しているのだが、閑古鳥が鳴いていた。私が入っていったときには誰もいなくて、あとからおじさんが入ってきた。このおじさん、さっきまで隣の理髪店の店先にいたおじさんだった。私が店にはいるのを見てあわててやって来たのだろう。まあ、そんなかんじのお店だった。

店内は6畳くらいで狭かったが、それなりに整理されている様子だった。置いてある本は、3分の1が「大人の本」、3分の1が漫画、残りの3分の1が文庫本・単行本だった。文庫棚は2列、単行本棚は1列で、そんなに量は多くなく、さーっと見ていった。ところがそこに思わぬ本が!

・佐藤泰志 『きみの鳥はうたえる』 (河出書房新社)

「えっ!」とおもった瞬間、もう手は本を掴んでいた。地道に探していると出会えるもんだなあ。感無量。その他にも、

・古山高麗雄 『湯タンポにビールを入れて』 (講談社)
・ウェルズ 『トーノ・バンゲイ(上)(下)』 (岩波文庫)
・岸田劉生 『抄録 劉生日記』 (同上)

を購入した。道に迷っていなければこの店にたどり着くことはまずなかっただろう。
Commented by 金子彰子 at 2010-09-24 07:25 x
佐藤泰志にそんな形でめぐりあわれるとは…全くうらやましいことです。そうした行ったことのない本屋さんに出会われることも。
Commented by anglophile at 2010-09-24 09:08
金子さん、おはようございます。この日のことはまったくの偶然でしたのでほんとに驚きました。佐藤泰志は、もうすぐ『海炭市叙景』が文庫で出ますね。久しぶりに新刊書店に行くことになりそうです。
Commented by Shermy at 2010-10-01 18:40 x
う〜む。
精進の足りない僕は未だ出会えていない『きみの鳥』。
他は全部持ってるのにこの1冊だけないんですよね。
ネットで買おうと思えば買えるんですが、
もう少しふらふら探してみようかな。
Commented by anglophile at 2010-10-01 22:33
Shermy さん、はじめまして。コメントありがとうございました。
すごいですね、残り1冊ですか。私はこのときの『きみの鳥はうたえる』で3冊となりました。折り返し地点ですが、ここからがまた長いようにおもいます。それにしても、佐藤泰志の題名の付け方はどれも絶妙ですね。
今後もよろしくお願いします。
Commented by Shermy at 2010-10-03 01:33 x
コメントバック有り難うございます。
僕が最初に買ったのは『ハードル』でした。
まだ新刊で売られていたときですから90年代初頭ですね。
既に彼は亡くなられていましたが、
そのあと夏の暑い日に図書館で全部一気に読みました。
あの夏の事は忘れられません。

個人的には彼の小説は夏だと思っていますが、
構想に終わった『海炭市』の夏篇は読みたかったです。
そろそろ映画も上映開始しそうですが
てっきり福間健二が『動物園』を撮るものと
いや、撮ってくれはしないかと勝手に期待していました。

anglophileさんはどの作品が印象に残っておられますか?
僕は断然あの夏に読んだ『動物園』です。
Commented by anglophile at 2010-10-03 23:58
お恥ずかしながら、私自身は佐藤泰志の存在を知ったのが数年前のことでしたから、shermy さんが新刊で佐藤作品を買われていたと聞いてうらやましくなりました。

しばらく前に『佐藤泰志作品集』を取り寄せてやっと読むことができた『海炭市叙景』が圧倒的に印象に残っています。1つ1つの物語がお互いにわずかに関係し合いながらも、あくまでも独立した関係を保って進行していく、しかしそれらはすべて「海炭市」を中心に展開される。この構成の絶妙さに唸りながら読みました。

その『海炭市叙景』も今週いよいよ文庫が発売ですね。また、映画の方も楽しみです。先日、その予告編を見ましたが、最後の「海炭市叙景」というタイトルが現れるところで落涙しそうになりました。
Commented by Shermy at 2011-02-19 17:20 x
お久し振りです。
当方は名古屋ですが、先日ようやく映画を観て来ました。
そちらは北陸方面かと思われますが、金沢でやっているのでしょうか。

たまたま私は90年代初頭に佐藤泰志に出会いましたが、
それは単なる偶然であってそう云う事は全く関係がないのだと思います。
実際、今回の映画を作り始めた当の本人も
ごく最近佐藤泰志を知った方らしいです。

つい先日までネット上に何冊か存在していた『きみの鳥』の在庫も
あっという間に全て売り切れてしまい、どうやら高騰しているようです。
まあ予想された事ではありますが、やっぱり買っておけば良かったかな〜
Commented by anglophile at 2011-02-19 20:47
>Shermy さん

コメントありがとうございます。

さて、金沢でも、いよいよ本日から『海炭市叙景』の上映が始まりました。私の方は、本日は行けませんでしたが、明日時間があれば行ってこようとおもっています。

佐藤泰志の本は、相変わらず入手しづらいようですね。私も9月以降お目にかかっていません。ところで、その佐藤泰志の本も4月以降におそらく4作品(?)が文庫本化されるようです。すごい勢いですね。いい春を迎えられそうです。
Commented by Shermy at 2016-06-05 21:50 x
久し振りに
ああ、あんなブログがあったっけ、と
訪れてみると
6年前のコメントもまだ残されており
何だかものすごく安堵と云うか
懐かしい気持ちになりました。

ご報告したかどうかも覚えていませんが
その後、結局、『きみの鳥』をヤフオクで買いました。
まあ何だかなと思いましたが、
ここにも落ちがありました。
出品者があうん堂・・・
うーん、やっぱり金沢か、と。
不思議な縁を感じました。

そう、先日金沢へ家族で旅行した際
始めてあうん堂さんに寄って来ました。
能登のコーヒーを頂いて
おばちゃんとひとしきりしゃべって
『能登線憧景』を連れて帰りました。

ああ、しかし、
金子女史の『二月十四日』は
もう手に入らない。
再販してくれないものですかね。
Commented by anglophile at 2016-06-08 21:10
どうもお久しぶりです。佐藤泰志の方は数年前に『そこのみにて輝く』を入手し、残すところ『移動動物園』だけとなりましたが、それ以来流れが途切れてしまいました。いつ手に入れられるのやら。金子さんの詩集はなかなか見つからないでしょうねえ。久しぶりに読み返してみたくなりました。
by anglophile | 2010-09-19 00:15 | 古本県外遠征 | Comments(10)