2010年 09月 18日
ときどき思い出してはすぐに忘れること   
なんとかこの1週間を乗り切った!週末の休日が3日あるのがうれしい。3日ぐらい休日があるのがちょうどいい。なまけものの思想。

さて、ちょっと古い話かもしれないが、松浦弥太郎さんが2006年の1年間(?)『群像』に連載していたエッセイ「僕の古書修行」のことをときどき気になって思い出す。私は1月号と10月号をたまたま買っていて、あるときそのエッセイが載っていることに気づいた。1回分が4ページという短いものなのだが、読んでみるとこれがなかなかおもしろい。古本者の心をくすぐってくれる。

この連載は1年分を合わせても1冊の本にするほどの分量に満たないだろうから、単行本にはなっていないとおもう。松浦さんの本は何冊か持っているが、それらにも収録されている様子はない。1月号と10月号しか読んでいないので、残りの号の連載がずっと気になっている。気にはなっているのだが、いつも次の日になるとそのことを忘れてしまっている。そういうのをこれまで5回以上繰り返している。で、よく考えてみたら、図書館に行けばバックナンバーがあるだろうから、それを読めばいいではないか、ということにさきほど気づいた。たぶんそのことにもこれまで3回ほど気づいているとおもうが、いつも次の日になるとそのことを忘れてしまっている。現に、しばらく前に図書館に行ったときも、そんなことは忘れていた。そろそろバックナンバーを読みに行くことを実行に移してもいい頃かとおもうが、まあこのままでもいいかともおもう。そんなことをおもいながら、今日も10月号を書棚の奥から取り出して読んでみた。これで何回目だろう。

断片的にしか読んでいないのでその全体の内容は分からないのだが、これはひょんなことから知り合いになった、松浦さんが師匠と呼ぶことになるA氏との関係を描いたもののようだ。A氏は85歳で、エッセイと随筆の研究をしている老人。でも、もう先は永くない。あるとき、随筆集を主に扱う古書店「カウブックス」を営む松浦さんのもとに、このA氏から手紙が届き、そこからこのA氏との奇妙な関係が始まる。

ずーっと飛んで、10月号には、しばらく音信不通だったA氏がふらりと松浦さんの店に現れたときのことが書かれている。久しぶりに店を訪れたA氏はこう言った。
「貴方、どうしてこんなに茶色い本ばかりを集めるのですか。まあ、大抵の古書店はこういった三十年前くらいの文学書の初版を集めたがるけれど、それは一体誰が買うのか知っていますか。これらの本を有り難く手にするのは、読書家ではなく、ただの古書マニアですよ。古書マニアは本を買っても読むことはせず、ただ飾るだけです。貴方の店はそういう客のための古書店ではないでしょう。ねえ」
松浦さんは何も言えない。レジの上にあった買い取ったばかりの横光利一『機械』の初版本を見てA氏はこう続けた。
「その横光利一の『機械』はマニアが欲しがる本です。程度が良ければ四、五万でも売れるでしょう。だけど一般の人は買いません。読みたければ文庫で読めるのです。すぐそこのブックオフに行けば三百円で買えますよ。いつから貴方はこういう本を売るようになったのですか。質の高い随筆を専門とする古書店にしたいと言っていたではありませんか」
松浦さんは言葉が出てこない。
「貴方、最近本を読んでいないでしょう。古書店の店主というのは、段々と本なんて読まなくなります。本を読まずに商売ばかりを考えます。ある意味それは仕方がないことだけれど、本を読まない店主の古書店に新しさなど生まれませんよ。新しくない古書店というのは、物ありきのただの古書ブローカーであるということです。マニア向けの高い本ばかりを右から左に動かすだけです。貴方はそうなりたいのですか...」
もはや絶句状態の松浦さんをA氏は一喝する。
「しっかりしなさい。大ばか者め!!」
この「愛情」の深さにじーんとなる。いつ読んでもシビれる。このあと一体どうなったのだろう。
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by anglophile | 2010-09-18 04:14 | 読書 | Comments(2)
Commented by 金子彰子 at 2010-09-20 11:11 x
最近の松浦さんの本は読んでおりませんが、料理家の長尾智子さんとの往復書簡に、このご老人の影が度々さし、気になっておりました。「しっかりしなさい、大ばかものめ」ですか。嫌味程度で終わらせないところに、このご老人の真摯さを感じます
Commented by anglophile at 2010-09-20 22:02
金子さん、こんばんは。長尾智子さんという方は今回はじめて知りました。ありがとうございます。調べてみたのですが、松浦さんとの往復書簡集ということであれば『独白ニュースレター』という本のようですね。機会があれば手にとってみたいとおもいます。松浦さんの本では、最近『今日もていねいに。』と『日々の100』をつまみ読みしました。どちらも爽やかな本でした。


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