2010年 09月 04日
トマス・ハーディの詩
副題に「1912-13年の詩」とあり、最初の妻であったエマの死を悼み、彼女への悔恨と追慕を詠った詩篇が収められている。
ピクニックの跡訳者の藤田繁氏は金沢大学で教鞭を執られていたようだ。なるほど、だから金沢のブックオフにこういう本が置いてあるんだな。
去年(こぞ)の夏
海に開けた丘の
小枝と荊棘で
焚火をした所へ
ゆっくりとわたしは
冬のぬかるみを登る
見ると一目で
わたしたちが後にした
場所がわかる
今は冷たい風が吹き
草は灰色だが
いま尚そこは
焦げた円の形をしている
炭になった棒切れが
わたしの立っている
草原(くさはら)にいまも散らばっている
わたしはあの日やってきた
一行の最後の遺物!
そう 去年と全く変らず
わたしはここにいる
海は奇妙な直線から
この丘へ相かわらず
潮風を吹きつけてくる
わたしたち四人が来たときのように
---だが二人はこの草の丘から
ピクニックとは無縁の
都会の喧噪へ
遠く去っていった
そして一人は---目を閉じた
永久に