2010年 06月 09日
『サミングアップ』   
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『サミングアップ』(朱牟田夏雄訳注、金星堂、昭和四一年第二七版)を入手した。これは「金星堂現代作家対訳双書」の一冊で、このシリーズは全部で四〇冊出ていたことが裏表紙のリストで分かる。四〇冊のうち、モームは九冊入っておりダントツの人気を誇っている。初版は昭和三一年だが、第二七版という数字もこの時期のモーム人気を表していると言える。対訳ということで、左ページに英文、右ページに日本語という体裁である。全文訳だと思って、原著と照らし合わせてみたら抄訳であることが判明した。朱牟田氏曰く、
本書ではページ数の関係ですべてを収めることは不可能だつたから、(1)なるべく日本の読者に面白そうな個所を、ということと、(2)モームが扱つたさまざまな問題のうち、ある問題を全然cutしてしまうということはないように、という、二つの標準に照らして、77章中から32章を選んで見た。(「解説」より)
さて、その朱牟田氏の弟子である行方昭夫氏が二〇〇七年に岩波文庫から『サミング・アップ』を出した。こちらは完全訳である。以下は、行方氏の「解説」のことばである。
本書の翻訳としては、新潮社のモーム全集の一冊として、一九五五年に『要約すると』という題名で中村能三氏の訳が出ている。また既に触れた対訳本は一九五六年に金星堂から出ている。(中略)特に後者は、本来学生向けに書かれた対訳本であるが、著訳者は朱牟田氏であり、精緻な注釈、正確で読みやすい訳語は他の追随を許さぬ出来ばえである。私事ではあるが、私の直接の恩師であり、今回の仕事では、昔の学生に戻った気分でいくつも教えて頂いた。先生が対訳本を書かれた年齢は今の私よりかなり下であるのに気づくと忸怩たるものがあるが、私としてはベストを尽くしたつもりである。
この一〇年ほどの行方氏の訳業には目を瞠るものがある。『サミング・アップ』の他に、『人間の絆(上)(中)(下)』、『モーム短篇選(上)(下)』、『月と六ペンス』、『たいした問題じゃないが-イギリス・コラム傑作選』(以上、岩波文庫)、『モーム語録』(岩波現代文庫)と立て続けに訳書を出版されている。ちょっとした「モーム・リバイバル」といった観もある。

さて、上の朱牟田版『サミングアップ』だが、装幀は明らかにPenguin Booksを意識していることが分かる。例えば、こんな感じ。
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ペンギンがサボテン(?)に代わっている以外はほとんど同じである。Penguin好きにはたまりません。
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by anglophile | 2010-06-09 20:46 | 古本 | Comments(0)


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