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古本万歩計 Of what is lost, all I wish to recover is the daily availability of my writing, lines capable of grasping me by the hair and lifting me up when I'm at the end of my strength. - Roberto Bolano

クリストフ・ヴァルツのスピーチ

三月といえば、アカデミー賞の季節である。ここ何年かで映画館で見たのが『イングローリアス・バスターズ』だけという門外漢がああだこうだいってもしかたないのだが、思い入れのあるタランティーノの作品だからなんとかがんばってほしいなあ、と陰で応援している。この映画もいくつかの部門でノミネートされていて、作品賞や監督賞は難しそうだが、クリストフ・ヴァルツの助演男優賞受賞はかなり現実的なようだ。

アカデミー賞の授賞式は来週あるのだが、一足先に前哨戦であるゴールデン・グローブ賞が発表されている。今日スカパーでそのゴールデン・グローブ賞の授賞式が録画放送されていた。お目当てのクリストフ・ヴァルツは最優秀男優賞を受賞していて、その受賞スピーチを見ることができた。それはもうすばらしいスピーチだった!
A year and a half ago, I was exposed to the gravitational forces of Quentin Tarantino. And he took my modest little world, my globe, with the power of his talent and his words and his vision. He flung it into his orbit. A dizzying experience. ... This whole planetary system of collaborators assembled around Quentin. ... I needed reassurance. I was in awe, so I got this reassurance from the wonderful people ...
Quentin made a big bang of a movie, and I wouldn't have dared to dream that my little world, my globe, would be part of that constellation. And now you've made it golden. Thank you very, very much.
タランティーノをひとつの大きな惑星に、そして共演陣や制作陣をその周辺をまわる星々に譬えている。ちっぽけな星であったヴァルツ自身もそのひとつに加えてもらったことに対して感謝しているという内容である。ゴールデン・グローブ(Golden Globe)という名の賞なので、惑星になぞらえたのだろうが、うまいなあと思った。準備してあったのか、それとも即興だったのかはわからないが、どちらにしてもヴァルツの知性を感じた。ますますファンになってしまいそうである。

それにしてもタランティーノは俳優の起用に長けている。一時期低迷していたハーヴェイ・カイテルやジョン・トラボルタを復活させたのもタランティーノといっていいだろう。ティム・ロスやサミュエル・L・ジャクソンも忘れてはならないだろう。サミュエル・L・ジャクソンなんて、『パルプ・フィクション』がなかったら、『スター・ウォーズ』に出演する機会はまずなかっただろう。そして今回のクリストフ・ヴァルツである。アカデミー賞を取ろうと取るまいと、今後ヴァルツが役者としてひっぱりだこになるだろうと私は予想している。この人たちはタランティーノに足を向けて寝ることができないといってもいいすぎではあるまい。

ちなみに、『イングローリアス・バスターズ』の魅力については内田樹さんがすでにブログで書いていらっしゃる。さすがの分析である。興味のある方はこちらからどうぞ。
by anglophile | 2010-03-06 03:41 | 映画 | Comments(0)