2010年 03月 02日
バンクーバーの古本屋
バンクーバー市内にも古本屋が何軒かあって、暇を見つけて足を運んだものだ。そのときに買った一冊がこちら。
たとえば、日本でも何冊か翻訳の出ているエイモス・チュツオーラ。このナイジェリア生まれの作家は、母国語ではない英語で小説を書く。彼の英語は独特で、こんな間違った英語で小説を発表する人間がいるのはアフリカの恥だ、と非難する人もいるそうだが、わたしはこの言葉に魅了された。(「外国語文学」の時代)この文章を読んだのが、ちょうどカナダに行く直前で、この作家の名前がずっと頭の中に残っていたのだが、運良くバンクーバーの古本屋で原書を手に入れることができたのだった。たしかに読んだときは衝撃的で、こんな英語がありなのか!と思ったことを覚えている。
A page from the author's MS. showing the publisher's 'corrections'出版者側の校正の跡がはっきり見てとれる。しかし、これは校正というよりも、「英語の添削」である。動詞の時制の一致が不完全であったり、whereverという複合関係副詞の綴りがwhere-everとハイフンでくっついていたりと、要するに「下手くそ」な英語なのである。でも、これで「文学」として成立しているところがすごいなあ。
さて、私が買ったこのペーパーバックは、Faber and Faberというイギリスの出版社から出ていたもの。たしか、現代文学を売りにしているけっこう「メジャー」な出版社だったはず。チュツオーラの本も、今も装幀を変えて普通に出しているようだ。でも、私はこの頃(一九六〇~七〇年代ぐらい?)のFaber and Faberのデザインが気に入っている。同じようなデザインのもので他にも次のような本を持っている。
いずれも一昔前の雰囲気を感じるのに十分な佇まいだと思う。これらはイギリスにいたときに、一冊二ポンドくらいで買ったのだった。