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古本万歩計 Of what is lost, all I wish to recover is the daily availability of my writing, lines capable of grasping me by the hair and lifting me up when I'm at the end of my strength. - Roberto Bolano

コナン・ドイルの短篇集

前エントリーで一五年前に訪れたダブリンの話をしたが、そのときの思い出話をもう一つ。六月にしては肌寒い、小雨の降るダブリンの街をあてもなく散策していると、一軒の古本屋の前を通りかかった。このときに買った本の一冊がこれである。
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Arthur Conan Doyle, The Conan Doyle Stories, (Galley Press)である。発行年がはっきり示されていない。少し調べてみると、八〇年代にイギリスで出版されたと判断できるようだが。カバーがあったのなら、これは裸本ということになる。見返しには「£5.00」と鉛筆で書かれている。私が訪れた一九九四年はまだアイルランド・ポンドが使われていたのだ。その後、現在の通貨がユーロになってしまった。ちなみに、現物が今手元にないので何ポンドの紙幣だったか忘れたが、以前のポンド紙幣の一つにジョイスの肖像が印刷されていた。今はもう使われていないのだろう。

ドイルといえば、なんと言ってもホームズである。しかし、私はその数年前に新潮文庫の『ドイル傑作集(一)~(三)』を夢中で読んだことがあった。訳者の延原謙が「解説」でこう書いている。

ドイルは死の前年すなわち一九二九年に、(ホームズ以外)の短篇作品をばらばらにほぐし、同種類のものを集めて一編となし、さらにこれを千二百ページ十編の大冊にまとめ、コナン・ドイル・ストリーズとして出版した。
これを読んだら当然もっと他の短篇も読みたくなるわけで、大学の図書館で調べてみたが残念ながらそこにはなかった。しかしその数年後、遠いダブリンの地でその短篇集を見つけることになり、その時は小躍りした。

さて、この短篇集にはあわせて七六篇の短篇が一〇のカテゴリーに整理されて収められている。見た目同様にボリューム満点である。そのカテゴリーとは、

①Tales of the Ring
②Tales of the Camp
③Tales of Pirates
④Tales of Blue Water (新潮文庫『海洋奇談編』)
⑤Tales of Terror (新潮文庫『恐怖編』)
⑥Tales of Mystery (新潮文庫『ミステリー編』)
⑦Tales of Twilight and the Unseen
⑧Tales of Adventure (新潮文庫『冒険編』)
⑨Tales of Medical Life
⑩Tales of Long Ago

現在、新潮文庫で入手可能なのは④⑤⑥の三冊のみである。しかし、昔はこれとは別の体裁で八冊ほど出ていたらしい。私は⑧を古本で持っている。それにしても、なんで三冊だけになってしまったのだろう。けっこう面白いからそこそこ売れると思うんだけど。ちなみに、新潮文庫の他に、創元推理文庫からも別の編集で五冊(四冊?)出ているようだが、これは未確認である。今度書店で確認してみたいところである。
by anglophile | 2009-12-04 19:20 | 古本 | Comments(0)